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【読書】ツイッターで日本全国0円旅!

今回紹介する本は、「ツイッターで日本全国0円旅! 」です。著者の土井雪江さん(デジタルハリウッド大学2年生)は、今年の1月31日にTwitterで支援者を探しながら交通費・宿泊費ゼロでの日本一周旅行に挑戦しました。日本以外でやったら遅くとも三日目には消息を絶つこと必至ですが、そこは世界トップクラスの治安を誇る日本のこと。二ヶ月後の3月22日には無事にゴールの東京・中野駅に到着しました。旅行の内容や周囲の反応などについての詳細は、追跡ブログまとめサイトもありますのでご覧ください。

さて旅行そのものは話題のTwitterを利用した企画であったことや、女子大生の挑戦ということが話題を呼んでネットニュースや新聞記事にも取り上げられ、その後もTwitterでフォロワー数が一万人を突破したり、泊めてくれた人の住所をうっかりばらしたり、ブログが炎上したり、とそれなりに注目を集めてきました。

一方で本書の売れ行きはというと、約一ヶ月たった現在もAmazonランキングでは150,000位程度と振るっていない様子です。まあ内容的にもAmazonのカスタマーレビューでも散々言われているとおり「○○に行きました」「△△に泊めてもらいました」「××を食べておいしかった」程度の本当にどこにでもある旅行記で、Twitterとか0円の旅ならではのイベントといったものがあるでもなく、たった二ヶ月で二回りほど大きくなったご本人の変化が一番面白かったなどとも言われていますが、ワキィ個人的には出発点は非常に良い企画だったと思うのに、なんとも勿体無い結果になってしまったもんだと思います。

まず、「Twitterを使って日本縦断」という企画自体は非常に面白く、Twitterの可能性を探るという意味でも意義のあるものだと思います。しかしながら、Twitterという双方向性のメディアを利用するからには他のユーザーとの交流や応援が不可欠であるにもかかわらず、Twitterはおろかネット全体から総スカンをくらうアプローチを選んでしまったことが致命的な失敗でした。こういう「嫌われても名前が売れれば勝ち」的な神風特攻マーケティングを選択するチャレンジャーもときどき現れますが、「著者が好きだから本を買う」とは必ずしも成り立たないにせよ「著者が嫌いだから本を買う」という理屈は明白に狂っているので、嫌われた結果が本当に商業的成功に繋がるかどうかを冷静に考えていただきたいところです。

で、なぜ嫌われてしまったかということですが、一つは「挑戦者が女子大生」というところにあったと思います。女子大生という属性が世間の注目を集めることに一役買ったのは確かですが、実は今回の企画との相性は最悪だったと言わざるを得ません。例えば、よく比較される猿岩石のヒッチハイク紀行ですが、当時の彼らが売れる前のお笑い芸人コンビという社会的弱者で、その彼らにとって神にも等しいTV番組プロデューサーからの命令で過酷な旅に挑戦させられるという構図が世間の同情や共感を少なからず呼び、あれだけの応援の盛り上がりに繋がったのだと思います。一方、土井雪江さんの「女子大生」といえば、親の庇護下にあってお金と時間と精神的自由と異性にも恵まれた日本における特権階級ですから、庶民に対して貴族の道楽に興味を持て、ましてや応援しろなどと求めるのはそりゃ酷というものでしょう。

また、「0円の旅」にしたことも失敗の一因だったと思います。「他力本願」とか「他人の善意を食い物にしている」みたいな反感を買ってしまったことも当然失敗ですが、自分のお金を使えないという縛りを設けてしまったために、他人の施しをあおぐ以外に当人の工夫や苦労の余地がなくなり、ドラマが生まれませんでした。これが「0円の旅」でなく「一万円の旅」ということにして、「節約のために○○県から△△県までは0円で行く」とか「今日は予想外の出費になったので、明日は一日バイトで増やす」といった戦略性やイベントを盛り込みつつ、一日の締めくくりとして本日の収支を報告するという形式にすれば、見ている方も楽しめたのではないでしょうか。というか、見る側はそういうドラマに期待していたと思うんですけどね。

そして一番の失敗が、出版ありきの企画であることを最初に隠していたことでしょう。こういう実は商売でした的なものに対して人間は本能的に嫌悪感を抱くもので、仮にもマスコミ関係者ともあろう者がそんな初歩中の初歩を見落とすとは、はっきり言って迂闊すぎました。どうせなら最初に企画を発表、同時に挑戦者を一般募集して「厳選な抽選の結果、女子大生の土井雪江さんに決定しました」ってことにすれば反感も買わなかったんじゃないでしょうかね。

もっと言うなら、挑戦中は誰がやっているか秘密にしておいて、ゴールした時点で初めて「実は女子大生がやってました」って種明かしするほうがサプライズになりますし、見ている側に挑戦者を推理、想像する楽しみができるので、より世間の注目を集めることができたんじゃないかと思います。

ともかく、Twitterの可能性を探るというより可能性の芽を踏み躙るような企画になってしまったのは非常に残念ですが、こんな益体もない企画に対して少なからぬ身銭を切って協力してくれる聖人君子が日本全国に200人以上もいたということで、物質面、精神面の豊かさなど、まだまだ日本も捨てたもんじゃないということのエビデンスにはなった、程度の価値はあるんじゃないでしょうか。

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